お金について考える(資本主義編)

資産形成

こーぷく@パパです。
前回の「お金について考える」では、お金の歴史を振り返ることで「お金のあり方」や「価値」は常に変わってきたことがわかりました。そんなお金ですが、お金を考える上で切っても切れない関係といえば資本主義ですが、最近ニュースでも「新しい資本主義」を耳にされた方も多いかと思います。

そもそも資本主義って何なのか?私たちの生活に関わり深い「資本主義」を改めて振り返り、新しい資本主義やお金との結びつきについて、理解を深めたいと思います。

封建制度の成立と衰退

まずはじめに、資本主義の前に成り立っていた「封建制度」について、振り返りましょう。

封建制度とは

封建制度とは、主に中世ヨーロッパや日本などで見られた、土地の所有権と権力が貴族や地方領主に集中している社会システムや政治制度のことを指します。

土地を支配する貴族

封建制度では、「封土(ほうど)」と呼ばれる土地を介して結ばれた主従関係に基づいて成り立っており、支配者たちは領民の土地を認めて保護する一方で、領民たちは領主へ忠誠を誓い、労働や戦争に従事することが求められました。このような支配関係は、当時の経済的・社会的状況に適応した制度であり、一定の秩序や安定をもたらす役割を果たしました。
(日本においては、「御恩」と「奉公」で学んだことがあると思います)

封建制度の衰退

ヨーロッパでは12世紀頃から貨幣経済が広がり、農民は農作物を売ったお金を蓄えるようになり、経済力を手にした農民は領主と取引し、自由を手に入れることに成功します。15世紀ごろには、王に権力を集中させる「絶対王政」が始まり、封建制度は次第に姿を消し、17世紀には崩壊しています。

日本においても、鎌倉〜江戸時代にかけて形を変えながら続いていましたが、近代化を目指した明治政府は天皇を頂点とする中央集権的な国家を作るため、大名の持ち物だった土地と人民を国に返還させる「版籍奉還」と「廃藩置県」によって封建制度は廃止されました。

このように歴史的には極めて長く続いた封建制度ですが、衰退に至った問題点をいくつか挙げてみます。

  1. 社会の固定化
    封建制度では、出自によって社会階級が固定化されていることが多く、上層階級と下層階級の間に壁が築かれ、社会の流動性が低下する傾向がありました。これにより、才能や能力に関係なく、出自が上である人々が上層階級に位置することが多くなりました。
  2. 経済的な不安定性
    封建制度では、領主や武士などの支配階級が戦争などのために費用を必要とするため、労働者たちから高額な税金を徴収することが多く、農民や商人たちが経済的な不安定性に苦しむことがありました。

そのため、これらの問題に対して、産業革命やフランス革命などの社会的変革が発生し、貨幣経済の浸透が進むことで封建制度は衰退し、徐々に資本主義に移行していきました。

反乱を起こす農民
反乱(一揆)を起こす農民

資本主義とは

続いて本題の資本主義についてですが、資本主義の「資本」って何なのか考えたことはありますか?
辞書で調べてみると「事業活動に必要な資金」と書かれていますが、生産手段などの「知的資本」や建物や設備といった「物的資本」、労働者などの「人的資本」など企業などの経済活動で価値を生み出す源泉と定義されています。

生産手段を有する資本家

そうした生産手段を有する資本を持った人(=資本家)が、生産手段を持たない人(=労働者)から労働力を商品として買い、企業や個人が自由に商品やサービスを生産して、自由競争により利益を得る経済システムを資本主義と言います。
資本主義の利点として、市場競争によって商品やサービスの質や価格が向上し、消費者が選択肢を持つことができるという点が挙げられます。また、資本主義は経済成長や技術革新を促進することができます。

資本主義による問題

一方で、資本主義には問題点もあり、市場競争によって企業が利益を最大化することが最優先されるため、社会的責任や環境保護を犠牲にすることがあるという批判があります。また、資本主義が生み出す富の分配に不平等性があり、経済的格差の拡大は多くの国で顕著な問題となっていますが、その主な原因をいくつか挙げてみます。

  1. 労働市場の自由化
    資本主義社会では、企業が利益を最大化するために労働力を安価に確保することが求められます。そのため、労働市場が自由化され、労働者の競争が激化することで、賃金が低下する傾向があります。一方で、企業の利益は増加するため、富裕層の所得が増加することになります。
  2. 資本の集中
    資本主義社会では、企業が成長するためには、資本の集中が必要となります。大企業は競合他社を排除し、市場支配力を確立することで、利益を増やすことができます。一方で、小規模な企業や個人事業主は生き残ることが難しくなり、所得が低下する傾向があります。
  3. 資本と労働の力関係
    資本主義社会では、資本と労働の力関係が不均衡であるため、資本家が富を蓄積し、労働者が貧困に苦しむことがあります。企業は資本を持っているため、労働者に対して不公平な条件を押し付けることができます。また、資本家が政治的な影響力を持つこともあり、政策の方向性が資本家に有利な方向に傾くこともあります。
経済格差

これらの問題を解決するためには、所得再分配政策や最低賃金制度の導入、労働組合の活動など、多角的なアプローチが必要であるとされており、最近度々耳にする「新しい資本主義」に繋がってきます。

新しい資本主義

資本主義の問題点が指摘される中で、今日本において取り組みが始まっているのが、「新しい資本主義」政策ですが、政府広報に次のように記載されています。

市場に任せれば全てが上手くいくという、新自由主義的な考え方が生んだ、様々な弊害を乗り越え、持続可能な経済社会の実現に向けた、歴史的スケールでの「経済社会変革」の動きが始まっています。
成長と分配の好循環による「新しい資本主義」によって、官と民が全体像を共有し、協働することで、国民一人ひとりが豊かで、生き生きと暮らせる社会を作っていきます。
様々な弊害を是正する仕組みを、「成長戦略」と「分配戦略」の両面から、資本主義の中に埋め込み、資本主義がもたらす便益を最大化していきます。

政府広報オンライン:新しい資本主義の実現に向けて より

このように「新しい資本主義」は、従来の資本主義に社会的・環境的(持続可能)な側面を加えた経済システムであり、企業が単に利益追求のみを目的とするのではなく、社会的責任(CSR:Corporate Social Responsibility)や環境的責任(ESG:Environment, Social and Governance)などの観点を取り入れて、事業活動や課題に取り組むことが求められています。これによって、企業が社会全体に対して責任を持ち、持続可能な経済発展を目指すことができるとされています。

資本主義の未来について考える

このように経済的制度の歴史を振り返ると、その時代の政治的な側面も受けつつ変わってきたことが分かりました。また、資本主義は産業革命以降から成り立ち、封建制度と比べると歴史的な長さでは短いということも分かったかと思います。きっとこれから先も多様な考え方(ダイバーシティーなど)が広まり、「新しい資本主義」の次をゆく経済的制度が生まれるかもしれません。

次回の「お金について考える」では、刻々と変化する経済制度の時代を生きる私たちが今取るべき道について考えてみたいと思います。

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